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宝の層から

人の意識というのは面白いものだ。頭の中には、思い起こせるもの、思い起こせないものを含めて、これまでに見聞きしたこと、経験した感覚などが全て入っているという。その中で意識に上っているものはごくわずかで、大半は何処かに隠れている。つまり、人はいつの間にか必要なものと、そうでないものを選び分けてある意味、合理てに生きているのだ。
この意識にはしかし層があって、表面に近いところから、つまり表層意識から深いところ、つまり深層意識に至るまで何重にも段階がある。深いところには普段気が付かないけれども、大切なことが詰まっている。それを取り出すのは難しいが、興味深い。

私のそんな幾重にもなった意識には、様々な音楽も流れている。取り出しもしないのに、突然聴こえてきたりする。残念ながら、私には作曲家の持つ感覚が磨かれていないので、聴こえてくるのは、今までに勉強した曲の断片だったり、好きな曲の一部だったりする。才能に溢れた作曲家だと、これが新しいメロディや奇抜なアイディアだったりするのだろう。
しかし、演奏家としてのして私の意識層には幸せを呼ぶ過去の大作曲家による名曲が山のようにひしめきあっている。誰にも侵されない宝のような領域だ。

人はそれぞれに宝の領域を持っているに違いない。それが度々取り出せる人は幸せなのだ。愛や大切な思い出や希望など、幸せを呼ぶものを誰もが持っている。それは意識のどの辺りの層にあって、どうしたら取り出せるかを考えられる人は、それだけでも幸福なのかもしれない。

そんな宝をどんどん深いところに放り込んで、いつか孤独に陥った時に取り出して楽しめるようにしておきたい。