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分かれ道

分かれ道

今日は春雨が冷たい。
春が手の届くところまで来ているのに、この冷たい雨に今日は待ったをかけられている。

独り厚いセーターを羽織って温かい生姜湯をすする。

こういった日の私は、まるで分かれ道に立っているようだ。
右に行けば、明るい春に続く開かれた未来がある気がする。
左に行けば、出口にいる筈の冬に逆戻りするような不安がある。

そして、現在立っている場所を改めて噛みしめて見る。
そこに見えるのは、幸せの上に立っている私の姿だ。
何故、分かれ道に立って、右へ、左へと行こうとするのだろう。 

そうなのだ。 私は今の生活に安住できない性を持っているのだ。 それは、演奏に決して満足しない事に重なる私の性だ。
もっと良いものを求める。 もっと高みに行きたい。 リスクを伴うこともたくさんある。  しかし敢えて今現在を良しとしない。
こんな思いを持って、絶えず分かれ道に立って何十年も歩いて来た音楽の道だ。
これからはどんな分かれ道が待っているのだろう。 どんな風に、右、左を選んでゆくのだろう。 そこには、痛痒いような期待がある。 分かれ道に立つ度に、今日のようにその時立っている場を確かめるのだろう。 それが私の音楽の軌跡になるのかもしれない。

温かい生姜湯はゆっくりと身体中に浸透してその優しさに包まれる。
体も心もリセットして、また明日からの雨上がりの春の陽に身を置いてみよう。