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秋風に想う

厳しい暑さも終わりを迎え、朝夕は長年親しんできた秋風が頬を撫でるようになった。最近の夏の暑さは半端なく厳しいものなので、やっとホッとできる時がようやく訪れたというのが正直なところだ。しかしながら、実は私はこの秋風に弱い。身体の中を吹き抜けていくようで、心細くなるのだ。食欲も落ち、体調も崩れてしまう。盛夏は暑い暑いと言いながらも、どこかに闘争心のようなものを持っている。それに比べて、この秋風のような心地よい優しさは、優しさに甘えてつい、自立心や前に進む力を失ってしまう。私はいつも叱咤激励されていないといけないのかもしれない。

初めてヨーロッパの地で生活を始めた時、その甘えを許さない厳しさに驚いた。自然自体が日本のそれよりシビアで、日本のようにふんわりとしたところが無い。日本の風土は色で例えると中間色だが、ヨーロッパは原色だ。雨に沈む街並み、闇に揺れる木々の影、強烈な太陽など、どれも刺激的で毒がある。人々は優しいが、yes、noがはっきりしている。妥協は許さない。そこに暮して、浮き彫りになるのは、孤独だ。しかし、自然や街は甘えるな!と叱咤してくる。前を向いて自ら歩くしかない。この秋風の優しさはなかった。だから頑張れたのだと思う。

ヨーロッパは好きだが、今、この歳でヨーロッパに独り暮らす勇気はない。少しは日本の秋風が好きになるだろうか。