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「つもり」と「現実」

私達の持っている意識や、隠れている無意識は、不思議なものだ。

例えば、ピアノを弾いている自分と、音楽を聴いている自分は別人のようだ。実際に出している音は、弾いている時に聴こえているそれと、後でピアノを離れている時に聴くそれとは、全く違う。こういう音をこういう風に弾いていると思っていても、実際には弾けていなかったり、逆に思わぬことが出来ていたりする。

脳科学によると、人間の脳は、同じものでもそれを出力する時と入力する時は全く違う回路で、意識も違ったものなのだそうだ。そこに実態の捉えにくい感情や無意識のうちに脳内に潜んでいるものが関わってくるから、なおややこしい。弾く私と聴く私、書く私と読む私は常に別人だ。だから、「つもり」と現実には大きなギャップがある。しかし、再び脳科学によると、このギャップこそが、人間を向上させ、創造性を生み出すという。ギャップをキャッチして、我々の頼もしい脳がフル回転を始めるのだそうだ。そのギャップこそが脳に未知の働きをさせる大きな要因なのだ。

ここで大切なことは、そこで脳の自然なその働きに任せきりにしないで、そのギャップの内容を知って謙虚に受け入れることだ。 それには例えば、ピアノでは、弾いたものを録音して、別人の耳でそれを聴きギャップを確認する。録音するという行為は、アレクサンダーテクニックにおいては、鏡に姿を映すことだ。ここでも身体の使い方が、「つもり」と現実では違っている事に気がつくだろう。何度もやっているうちに、この入力と出力の差が縮まって同じステージに並びかける。油断すると、また別の方向に向かい始めるので、努力は絶やさない。

思いがけない脳の働きに期待して、想像力や創造力を深化させていきたいものだ。